1-1 第二文明の崩壊

 d星の文明は最低でも3つあることがわかっている。そして私たちが過ごしている今の文明は3つめの文明、第三文明である。
 第二文明は暦前15年7月4日に起こった核の雨により崩壊した。これは、レストイの従属国であるファータラーオガールのスパイが憲兵に殺害された(ハウダ殺害事件)ことによるガールファータラーオ戦争(ハウダ戦争)がきっかけだ。ファータラーオは軍事力2位であったガールになすすべなく4日で降伏したが、その宗主国であるレストイが奪還のためガールに宣戦布告した。また同盟国であったメトイも参戦し、これが第三次世界大戦となった。ガールは核兵器の保有数が1位であり、当初から核戦争への発展が危惧されていた。工業大国であったレストイと軍事力1位であったメトイに圧倒されたガールは開戦から4か月で首都ユージャを連合軍に包囲された(ユージャ包囲事件)。ガール国王のタッタシュルトは「東方奪還作戦」として、連合軍に占領されていたアンロウ大陸(現在のアンカウ大陸)東方地域の軍事基地を目標に核ミサイルを発射する作戦を採択した。この動きを感知したレストイ軍は東方地域の住民の強制退避と、迎撃部隊配備を急いだ。しかし、住民の半分が避難完了し、迎撃部隊も7割ほど配備されたときに、ガールは核ミサイル13発を東方地域に向け発射した(東方核作戦)。このうち8発は迎撃ミサイルにより大気圏で焼失させることに成功したが、5発は東方地域を直撃、東方地域の8割を占めるニッシャタープやルルンは陸地が完全になくなり海となった。ミサイル迎撃部隊と東方地域住民の大半、そして東方地域自体を失った連合国総長ワエカはガールへの徹底抗戦を宣言。首都への核攻撃を決定し、核兵器実証実験としてガール南部の過疎地域への攻撃を始めた。またこれに対しガールは核兵器を分散、発射場を増設し始めた。またタッタシュルトは「国民は戦争に関係ない、首都は私が守る」と連合国側に首都の住民の避難受け入れを要請、連合国はそれを受諾し、避難民を難民として受け入れることにした。難民受け入れ中、連合国は実験地として使っていたラウラーへの核兵器使用を中断、核兵器の製造量を増やしていた。ガールは核前線と称し国境部に発射場を建設し、予想される核の応酬に準備した。難民要請をしたユージャ住民全員の避難が終了したと告げられた1時間後、ガールはユージャ核実験場からメトイ首都ハイブ、レストイ首都エンガータ、レストイ傀儡ヴァーニ首都ジャガランなど、連合国各国の首都に向けて核ミサイルを発射した。ユージャ包囲部隊の隊長バンファは「赤い雨が降り出した」と言い、ワエカに首都攻撃を要請した。連合国はカールントに配備していた核兵器部隊に首都への核ミサイル発射を指示、実行された。それと同時に核前線からも核ミサイルが発射され、アンロウ大陸北部と東部が壊滅的被害を受けた。
 この核兵器の応酬は核の雨と呼ばれている。核の雨により、国境に前線を張っていたガール軍が連合国領になだれこみ、無差別攻撃を開始した。それは連合国軍も同様であった。これは核の雨による恐怖心からの統率崩壊が生んだものとされている。核の雨とその後の攻撃により、ガール国王の住まいにあった核シェルターに避難していた7人を残し、人類は死滅してしまった。生存者の証言では、連合国側には戦争が始まる前からスパイが相当数潜んでおり、そのスパイによる内部からの統率崩壊もあったとされている。ちなみに、この生存者の中には初代ウリス国首相のオウカも含まれている。