竿竹に関する一考

※すべてはフィクションである。竿竹もフィクションだ。

豆腐屋の移動販売のラッパが聞こえる。
ここでは古紙回収に次いで聞こえるのがこのラッパである。
石焼き芋のあの音はあまり聞こえない。
そういえば移動販売の音の代名詞でもある竿竹屋はほとんど聞いたことが無い。
あんなに移動販売の音として言及される竿竹屋だ。
聞くのは1年に1回もないはずである。
脳内再生が容易なあの竿竹屋を生で聞いたことが無い。
ネット上でも竿竹屋の話を見ることがほとんどない。
これを書いている今も「さおだけー」とおっちゃんの声が流れている。
ネット上で自分の見たい情報だけが見えるフィルターバブルという言葉があるが、
これも一種のフィルターバブルなのだろうか。
僕は意識的に竿竹屋の情報を見たくはなく、その結果として竿竹屋の情報を知らない。
もしかしたら世間では竿竹屋が普遍的に流行しているのかもしれない。
「今年の竿竹トレンド」だとか、「あの有名人監修の竿竹」だとか、そうやって入り込んでいるのだろう。
ネットでは人気でも世間ではそうでもなかったり、その逆に世間では知られていてもネットでは話題にならないこともある。
僕は今年の竿竹のトレンドカラーすら知らない。多分青色だ。
というか竿竹ってなんだ。
何だと言えば物干し竿なのだが、移動販売を行うほど需要があるものなのか。
個人的なイメージでしかないが、物干し竿はそんなにやわじゃないと思う。
一般的な物干し竿は金属製で明らかに耐久度は高いだろうし、たとえ竹だとして、あの竹だぞ。
たやすく破壊されるようなものではない。
計画的陳腐化みたいなものだろうか。
あえて竿竹を壊れやすいようにしておく、例えば竹の節を全破壊しておくだとか、竹の維管束に沿って穴をあけるだとか。
まあ今時の竿竹は竹製ではないだろうが、金属製だとしてもやりようは多くある。
そうやって竿竹を壊れやすいようにしておいて、そして移動販売車を走らせる。
企業としては長く保つよりも少し短い寿命であるほうが継続的に利益を出すことができる。
いかに堅牢な製品をつくれたとして、それではほとんど売れない期間ができてしまうのだ。
計画的陳腐化竿竹、これも竿竹屋の陰謀である。
おそらく裏で竿竹屋同士の金銭授受もあるだろう。
同じ会社では怪しまれるだろうから、循環的に複数の会社が売りに来るのだ。
しかし、僕はほとんどその音を聞いたことが無い。
……そういうことか。
この流れを掴んだ公安がステルスでこれの被害に遭わないようにしているのだ。
闇竿竹屋の摘発により、結果的に竿竹屋の音が聞こえることが無くなっている。
表竿竹屋もこの風評被害で営業が厳しくなっているに違いない。
そうなれば都市部での販売が主になるだろうから、こんな片田舎では観測することが出来ないのだ。
ここまで竿竹を運搬してくるコストを考えれば明白だ。
今日も実体を持たず空気を振動させ移動販売を感じる。
あの豆腐屋だって存在するかは観測できていないのだ。