語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2022 の7日目にあたる12/7(水)の記事である。あどゔぇんとかれんだーなるイベントには初めて参加する。参加者には人工言語系の人が多いためグルジア語に関したトピックでも良かったが、有益なものを作れる自信が無かったため自言語の接吻語について書くことにした。
接吻語とはなんだろうか
接吻語とは単純に接吻行為によって意思疎通を行う言語である。手話が手の動作なら接吻語は舌の動作だ。
おそらくこの一文で「キモいな」と思われたかもしれない。実はこの言語の始まりには色々な流れがあり、そのなかで僕が結果的にこの言語の創作を任されたというお話がある。しかしまあその嫌だなと思われた方にはぜひ「舌で意思疎通するとしたらどうなるだろうか」という観点で読んでいただきたい。
この言語のスタートは令和2年の4月頭、そして創作自体がちゃんと進んだのは令和3年の8月末頃である。僕個人のモチベの関係でそれ以降もあまり進まず、作文が可能なレベルには未だ達してはいないが、一度ここで既に決まっていることについてまとめていく。
またここでは一つの言語として接吻語を扱うが、性質的には「手話」という単語と同じようなもので言語のカテゴリの一つだと考えている。
接吻語の「音」
人々が普段使う多くの言語には「発音」というものがセットになってくる。声帯とか口腔とかを使い音の振動で意思疎通を行う。しかし接吻語においては声を使った意思疎通は行わない。その声にあたるものが接吻語では舌となるのだ。
ただこの舌の動き等の単位をどう言えばいいのかかなり悩むため、接吻語でも音素という言葉を利用する。
表現要素
接吻語における音素となるグループは
- 接吻点→口腔内での舌の接点
- 接吻動→口腔内での舌の動作
からなり、この2つを合わせたものを接吻という。そしてこれを音節として扱う。聴取者は感じた接吻動と接吻点の推測から音節を判断する。
また接吻点には「接」「被」の分類がある。接とは発話者が使う音素、被は聴取者が感じる音素である。
接接吻点
これは発話者の舌に定義された音素であり、聴取者の被接吻点に当てることで音素となる。文字転写ではラテンアルファベットまたは部位を表した単語を使う。
位置 | 転写 | 画像色 |
---|---|---|
外唇 | a | 青 |
舌尖 | i | 赤 |
舌端裏 | u | 緑 |
前舌面 | e | 水 |

被接吻点
これは聴取者の口腔内に定義された音素であり、発話者に当てられることで音素となる。文字転写ではラテンアルファベットまたは部位を表した単語を使う。接接吻点と被っているものに関しては、接接吻点であるときは「接~」、被接吻点であるときは「被~」を頭につけて区別することがある。
位置 | 転写 | 画像色 |
---|---|---|
外唇 | b | 青 |
内唇 | c | 紫 |
舌尖 | d | ピンク |
舌端裏 | f | 赤 |
前舌面 | g | 水 |
歯 | h | 紺 |
硬口蓋 | k | 緑 |

接吻動
これは発話者の舌の動きで定義された音素であり、聴取者に対して行うことで音素となる。文字転写では算用数字または移動を表した単語を使う。ここにおける横とは相手の両目を通る線と平行である向き、縦とはその横と直交する向きである。
動き | 転写 |
---|---|
一瞬触れる | 1/点 |
触れたまま動かさない | 2/接 |
横移動 | 3/横 |
被接吻点の端から端まで横移動 | 4/横端 |
縦移動 | 5/縦 |
被接吻点の端から端まで縦移動 | 6/縦端 |
どこにも触れない | 7/中空 |
接吻
先述の通り接吻語では接吻点と接吻動をあわせて接吻といい、これを音節として扱う。
例えば、
舌尖硬口蓋横端(ak4)
という音節は
舌尖を相手の硬口蓋の端から端まで横向きに移動させる
という接吻行為をあらわす。これの羅列(連続)によって意思疎通を行う。
また、接吻動の中空は音節を形成しない。これは接吻点を定義することができず、単語等の区切りとして扱うためである。
禁忌接吻点
禁忌接吻点とは接吻に含むことのできない接吻点のことである。つまり、物理的に難しい組み合わせだ。
- 外唇外唇(ab)以外の接外唇
- 外唇は口腔内の被接吻点には使わない。
- 舌尖内唇(ic)
- 接吻しにくいため。
- 舌尖舌端裏(if)
- 接接吻点が舌尖であるか前舌面であるか判別しにくいため。
- 舌尖前舌面(ig)
- 接接吻点が舌尖であるか舌端裏であるか判別しにくいため。
- 舌端裏外唇(ub)
- 接吻にしにくいため。
- 舌端裏舌端裏(uf)
- 接吻しにくいため。
- 舌端裏硬口蓋(uk)
- 接吻しにくいため。
- 前舌面外唇(eb)
- 接吻しにくいため。
- 前舌面内唇(ec)
- 接吻しにくいため。
- 前舌面舌尖(ed)
- 接吻しにくいため。
- 前舌面前舌面(eg)
- 接吻しにくいため。
禁忌接吻
禁忌接吻とは接吻として認められない音節のことである。
- 外唇外唇点(ab1)、外唇外唇接(ab2)以外の外唇外唇(ab)
- 点と接以外はやりにくいため。
- 舌尖舌尖横端(id4)、舌尖舌尖縦端(id6)
- 横、縦と区別が難しいため。
- 舌尖歯縦端(ih6)
- 被移動範囲が小さく縦との区別が難しいため。
- 舌尖硬口蓋縦端(ik6)
- 被移動範囲が大きく縦との区別が難しいため。
- 舌端裏内唇横端(uc4)、舌端裏内唇縦端(uc6)
- 接移動範囲が小さく横、縦と区別が難しいため。
- 舌端裏舌尖横端(ud4)、舌端裏舌尖縦端(ud6)
- 被移動範囲が小さく横、縦との区別が難しいため。
- 舌端裏前舌面横端(ug4)
- 被移動範囲が小さく横との区別が難しいため。
- 舌端裏歯縦端(uh6)
- 被移動範囲が小さく縦との区別が難しいため。
- 前舌面舌端裏縦端(ef6)
- 被移動範囲が小さく縦との区別が難しいため。
- 前舌面歯縦端(eh6)
- 被移動範囲が小さく縦との区別が難しいため。
- 前舌面硬口蓋縦端(ek6)
- 被移動範囲が小さく縦との区別が難しいため。
口腔以外の接吻
接吻語では口腔のみを対象にするわけではなく、固定的な意味を付与された口腔以外の接吻が定義されている。
接吻位置 | 意味 |
---|---|
接左頬 | こんにちは (会話開始) |
接右頬 | ありがとう |
額 | さようなら (会話終了) |
鼻 | 文章終了 |
余談
この言語は途中から「百合作品で出てきたらいいね」みたいなノリになっていた。いいね。
音を使う言語、文字を使う言語、音と文字を使う言語、手を使う言語、口笛を使う言語……そして舌を使う言語である。この接吻語にはまだ作文能力が無い。これから頑張る。